中国はドルに代わる基軸通貨として人民元の国際化をはかっている
20力国・地域(G20)の2011年議長国フランスのサルコジ大統領の呼びかけにより、国際通貨システム改革についての「ハイレベルーセミナー」が、東日本大震災から20日後の3月31日に中国の南京で開かれた。セミナーとはいえ、集まった国際金融界の鈴々たる顔ぶれと議論されたテーマからして、次の国際通貨システムへの極めて重要なステップだったと考えられる。
サルコジ大統領は前日、北京を訪れ、胡錦濤総書記と会談し、このセミナーで講演した後、東京に飛び、菅直人首相と会談したのである。セミナー開会のスピーチで中国の王岐山副首相は、中国が資本取引の自由化と為替変動相場制とを実行するのに先立ち、現在の国際通貨システムを改革Tることを要求した。また、中国は現行のドル基軸通貨体制をただちに別のシステムに移行させる意志はないが、新システムの構築に主体的に関与する意志があることを示唆した。
続いてスピーチしたサルコジ大統領は、国際通貨基金(IMF)の機能を拡大することによって、ルールと協調と監視と安定性とを伴った為替変動相場制を樹立すべきと述べ、(ビジネスーブレークスルー大学教授)その成功例として震災後の円急騰をG7の協調介入によって抑止したことを挙げた。
また、中国の人民元国際化の意志を歓迎し、人民元などの新興国通貨をIMFの特別引出権(SDR)に組み入れる時であると述べた。これは、200j年に周小川・中国人民銀行総裁の名義で発表された改革案を踏襲している。
ストロスカーンーMF専務理事は、基調講演の原稿で、現在の国際通貨システムを不安定にしているグローバルな準備資産の供給不足を解消するために、現在SDRを構成する米ドル、ユーロ、英ポンド、円の4通貨以外の新興経済大国の通貨(文脈から明らかに人民元)をSDRに組み入れることで、その国際通貨化を促進することを提案した。
SDRに組み入れられることで、自由な資本取引と変動為替相場制とを回避したまま、人民元が国際通貨として認知され、国際貿易や対外投資の決済に用いられるようになる、というのは中国の狙い通りである。
一方、ガイトナー・米財務長官は配布資料で、一部の新興国(この場合明らかに中国)の厳格な資本移動規制と為替管理とが最大の問題であるとし、新たな条約の締結や機関の創設は不要であり、G20ですでに合意したこと(中国の資本移動の自由化と為替変動相場制への移行とみられる)のすみやかな実行を要求した。
さらに、SDRの構成通貨は、為替変動相場制、独立した中央銀行、自由な資本移動の3要件を満たすべきだとし、米国がIMFよりも重要な役割を国際金融システムにおいて果たしていることを強調した。